人は、脆い。

















ありとあらゆる手を、尽くした。
けれど、既に心音の無い船長には無駄だったのかもしれない。





「人は、脆い。
頭なんてその最たるものだ。」






おれは、前に船長がそう言って笑ってたのを、思い出した。













「船長、船長・・・。お願いだから、目を開けて・・・。」

その晩、おれは船長のベッドに突っ伏した。
涙が止まらなかった。



船長は、綺麗な身体のままベッドに横たえられている。
いつもと同じはずが、いつもと同じでないのは、その身体が冷たい事。
そしてその目がもう二度と開かない、事。







嵐は、乗り越えた。
早朝には次の島に着くだろうと、航海士が漏らした。
けれど誰もが無言だった。











「次の島で、解散する。」


待ち望んだ筈の島が見えた時、ペンさんが呟いた。
おれは涙の枯れた顔で、小さく頷く。
ふと横を見ると、いつもの通りシッカリしたペンさんの横顔。



そこで気付いた。

彼は、最後まで副船長であろうとしている。




己の悲しみを、後回しに。