「お二人とも!大丈夫でしたか!?魔物に遭われたと聞きましたが・・・!」
皆の居る場所へと帰った二人を待っていたのは、先に帰ってきたチェスターから事情を聞いて心配するミントだった。
「うん、クラースさんがかすり傷だったけど・・・」
「これくらいグミで十分だよ。有難う、ミント。」
結局シナモンは採って来れなかったが、と付け足して、ふと辺りを見回すクラース。すずは道具袋からグミを取りに行ってくれたし、チェスターは弓矢を片付けている。そして此処には、クレスとミント。
「・・・・一人、足りなくないか?」
それも、一番五月蝿い人間が。
「そういえば。ミント、アーチェは?そろそろご飯にしようよ。」
クレスも気付いていたらしく、キョロキョロと辺りを見回す。が、その姿は捕まえられない。
話を振られたミントは一瞬身を硬くして、オドオドと視線を彷徨わせる。クラースにグミを手渡したすずもアーチェについて触れる事無く、黙っているのだ。これは何か怪しいとクレスとクラースが眉を寄せた時、4人の元にとんでもない異臭が風に乗って届いた。
「・・!?」
まるで硫黄のような、きっと瘴気を臭いでイメージしたらこのような感じになるのでは、と思うような悪臭。
「この異臭・・・こんな所にナイトストーカー(※ゾンビ系魔物・アーリィ周辺出没)が!?」
「いえ、ヨチョール(※円柱に触手が生えたような魔物・炎の塔出現)かもしれません!」
現段階で思いつく異臭を放つ魔物の名前を挙げ、武器を持ち直す二人。異臭の元はどこかと緊張感に縛られながら素早く辺りを見回す。

うわあああああっ
同時に、チェスターの悲鳴が4人の元へ聞こえてきた。

声がした方、それは・・・
「テントの裏・・・かまどの方だ!」
4人の場所からは死角になって見えないが、確かに声はそちらの方から聞こえてきた。慌てて駆け出そうとしたクレスとクラースを他所に、ミントとすずは何かを言いあぐねている様な表情を浮かべていた。
「あの、お二人とも・・・」
「ミント早く!!」
そして、何かを伝えようとしたミントの言葉を遮り二人は走り出して行った。
残されたのは、ミントとすず。
「・・・どう、しましょう・・・」
「見事に収拾がつかなくなりましたね。」


「チェスター!」
「大丈夫か!?」
バッと勢い良くテント裏に出た二人だったが、彼らもチェスターと同じように悲鳴を上げることとなる。
「うわあああ!!」
「ひっ・・・・!」
クラースなど最早声にならないようで、腕で口元を押さえて後退するのがやっとといった様だ。それを庇う様にクレスが前へ出る。

そう、二人が目にしたもの。
かまどの鍋から噴き出す程沸騰している黄土色をした液体と、その中に見え隠れする何かの足や触角など。モクモクと立ち上がる煙は若干緑色をしているようにも見える。そんな鍋の前に、鍋蓋を持って尻餅をつき、失神しかけているチェスター。
まさに、地獄絵図だった。

「チェ、チェスター!早く鍋蓋を!クレス、バケツの水をかけろ!」
「チェスターにですか!?」
「鍋だ鍋!!」








「・・・説明してもらおうか。」
数分後。
騒ぎの影からひょっこり出てきたアーチェを正座させた前で、クラースは腕を組んで黒焦げになった鍋を横目で見た。後方でミントとすずがその様子を見守っている。
「うぅ〜・・・。アタシだって、料理して、皆に食べてもらいたかったんだもん・・・。」
「それは悪いことじゃない。問題は、何をどうしたら鍋がアレになったかということなんだ。」
「」



2007.10.5    水方葎