クンツァイトの便利機能と聞いて、とあるスキット等が思い浮かぶ方は大丈夫です。
あ、クンツァイトのソーマの事じゃないです。彼自身です。
地名、進行状況などはでてきておりません。
* 個人的健康診断 * 今日もまた、彼らは目的の為の進路をとっている。しかし戦闘を重ねれば疲労は隠しきれず、シング達一行は体力回復の為に、大樹の恩恵を受ける木陰での休息を選択したのだった。 天気にも恵まれて、それぞれ束の間の休息をとり、ソーマの手入れをしたり談笑をしたりしていた時だった。木に凭れて伸びをしていたヒスイの方へ、クンツァイトが近付いてくる。一見重そうな鎧だが当の彼はそんな素振りをみせず、静かにヒスイの目の前に立った。 「・・・ンだよ。」 立っただけで何も言おうとしないクンツァイトに、ヒスイが眉を顰めて問う。喧嘩腰のように聞こえる彼の台詞は、慣れてしまえばただ口調が悪いだけで威嚇をしている訳ではないと分かる。クンツァイトも既に理解しているのか、動じずに己の手をヒスイへと差し出した。 「ヒスイ。手を握れ。」 「あぁ?」 「オマエの体脂肪を測ってやろう。」 「いらねぇよ!!」 即座に切り替えしたヒスイは、そういえばイネス達がクンツァイトの秘密機能がどうのと騒いでいたな、と思い出す。 「そうか。」 「ったく・・・シングでも適当に測ってろよ。」 「否、この機能が今現在一番必要なのはオマエだと思うが。」 「は?」 表情も変えず差し出した手を戻したクンツァイトに、ヒスイは思わず耳を疑う。体脂肪の測定が必要な人間なんて居るのか?と口に出す前にクンツァイトが答えた。 「双弓型ソーマを扱うにしては身体に重さが足りない。現に威力の強い技を使うとき、お前は若干己を支えきれず後方にブレているだろう。空中での連射も必要以上に後ろへ移動している。」 その冷静な戦闘解析に、薄々自覚があったヒスイは彼を睨み上げる。 「俺がソーマを扱いきれてねぇって言いてぇのか。」 「否定。強い反動を利用し、先に目視で定めた標的へ攻撃を切り替える素早さと、狂いもなく標的を打ち抜く技術は賞賛する。」 「!」 ヒスイはそこまでクンツァイトが己を見ていた事に驚き、思わず目を見開いた。 扱い始めた時は反動の大きさに飲み込まれそうになっていたが、逆にそれを利用する特訓をして戦闘に生かしていた事は誰にも教えていないはずだ。それなのに、一番最後にパーティに入ったクンツァイトがそれをいとも簡単に見抜いたのだ。同時に、褒められ慣れないヒスイは居心地悪そうに、伸ばしていた足をあぐらに組み変えてクンツァイトから視線をそらす。 「・・・じゃあ、何が言いてぇんだよ・・・。」 ヒスイが足を伸ばしていた分、更に近付いてからクンツァイトはその場に腰を下ろした。 「ヒスイは妙な方向に勝手に誤解を進める為、先に言う。貧弱と言う訳ではないが、もう少し太った方がいい。」 「あぁ?」 「オマエの身長・体重データから割り出したBMIはほぼ標準だ。だがそれだけではソーマからの衝撃に…」 「ちょちょ、ちょっと待て!」 淡々と続けるクンツァイトに、思わずストップをかけるヒスイ。己が話についていけてないのである。とりあえず一つずつ疑問を解決しようと、深呼吸を一つ。 「んだよ、その"びーえむあい"って…。」 「BMI、−BodyMassIndex−身長と体重から割り出すことの出来る体格指数だ。」 「・・・。で、テメェは俺のソレを計算してみた、と。」 「肯定。ヒスイの20.7という数値は人間男性標準の18.5〜25には入っているものの、やや痩せ気味だ。」 「〜〜ッ!!肯定、じゃねぇ!!ンなもん勝手に計算すんな!!」 「だが、体重のデータ提供をしたのはヒスイだろう。」 確かに大分前の宿で体重を聞かれ、最近のものを答えた覚えがあるヒスイは頭を抱えた。一体この機械人は何をやっているのだろうと溜息の一つもつきたくなる。女ではないが、ある種のセクハラなのではないかとすら思ってしまう。というより、ヒスイにとっては余計なお世話でもあるのだ。 「で?ソーマの反動に耐えれるように太れ、ってか?」 「肯定。その方が身体への負担も少なくなるだろう。」 あくまで事務的にそう伝え、頷くクンツァイト。彼は彼なりに真面目な話をしているのだろうが、ヒスイにとっては頭が痛くて仕方が無い。太れと言われてもそう簡単に太れるものではないし、技術を体型でカバーするなんてもっての他だ。それに、負担なんて考えていたら戦闘にならない。 「ったく。・・・テメェはそんなに俺の戦いに不満なのかよ。」 「否。そういう意味では…」 「なら、いいじゃねぇか。」 珍しく少しだけ眉を寄せて弁解を始めようとする機械人に、ヒスイは笑う。 「無理矢理体重なんて変えるモンじゃねぇし、俺はこれからもっともっと強くなる。技だって凄ェの編み出してみせる。体重の所為で足手纏いになってる訳じゃねぇなら、別に良いじゃねぇか。」 「・・・。」 手を後頭部に組み、そう言って笑うヒスイにクンツァイトは口を閉じてしまう。 そうして何かを諦めたかのように、ゆっくりと立ち上がった。 「了解した。それならば、この事について自分は何も言わない。」 「おー。そうしてくれ。」 タイミング良く、少し離れた所でシングが休憩終了と声をかけ皆を集め始めている。クンツァイトにならってヒスイも立ち上がり、その横に立った。 気持ちの良い青空が広がり、ほんの少しの昼寝には最適なひと時だった筈。それを邪魔された気になり、ちょっとした仕返しでもするかとヒスイのスピリアに悪戯心が湧き上がる。 「それに、ほら。」 「む。」 「答えた体重なんて大分前の事じゃねーか。今は変わってるかもしんねーし?」 ヒスイは少し高い位置にある、自分より少し濃い色をしたアメジストの瞳を見上げるとニヤリと笑ってみせた。いつも表情の変化に乏しいクンツァイトだったが、心持ちきょとんとしているように見える。 何だかそれだけで満足したヒスイは、彼の言葉も待たずにシング達の方へと歩き始める。データの正確性には少し自信をもっているあの機械人の事だ、持っているデータが古い事に悔しがり…は、しないだろうが、少しでも残念がれば良い。そう思いながら、此方に気付いて手を上げるシングへ応えるように軽く手を上げた。 その時だった。 「―ッ!!?」 膝あたりから、すくいあげられる感覚。 同時に、視界の急激な回転。 何が起こったか理解出来ず、それでもみっともない声を堪えたヒスイは眼前に広がる顔にギョッとした。 「目標捕獲完了。これより計測を実行する。」 「は!!?って、ちょ、ンだよ!降ろせッ!!」 ようやっと自分が横抱きで持ち上げられていることを理解したヒスイは、ジタバタと暴れる。シングも、コハクも、・・いや、この距離ならば皆に見られているだろう、その事実がヒスイを赤面させる。だというのに、肝心の機械人は動じずにジッとヒスイを見つめているだけだ。 「動くな。正確な測定が出来なくなる。」 「すんじゃねぇ!ヤメロ、ホントもうマジでっ!」 「ヒスイ。"本当"と"マジ"という言葉はほぼ同意義だ。並べて使うのは間違っている。」 「降ろせ、降ろせっつの!!」 すっかり混乱しきっているヒスイはクンツァイトの鎧の身体を叩いたり蹴ったりしているが、彼には何の効果もないばかりか自分にダメージが跳ね返ってしまう。クンツァイトはヒスイを抱えたまま、バランスを少しも崩さずにシング達の方向へ歩いてゆく。 「く・・クンツァイト?何、やってんの?」 あまりの絵面に固まってしまっていたシングが、しどろもどろに訊ねる。彼の腕の中ではヒスイが暴れたままなのだが、ソーマと己の腕を使ってガッチリとホールドしている為にそれもままならないようである。 「ヒスイの肉体データ取得中だ。あと5秒で全てのデータが取得出来る。・・・2、1。完了した。」 「そ、そう・・・。」 唇の端を引きつらせながら、シングはその光景を見守っていた。 「ヒスイ。データ取得完了した。降ろすぞ。」 「ぅぁあっ!マジで最悪だッ!!何が悲しくて男に抱き上げらんなきゃなんねぇんだよぉ・・!!」 身体では抵抗出来ないほど4本の腕に抱き締められていた為か、抵抗は口でのものとなり、愚痴のような泣き言に変わっている。シングは心の中で両手を合わせながらも、聞いたことの無いヒスイの声音に何故かスピリアが揺れた。 「ヒスイ。落ち着け。降ろすぞ。」 「早く降ろしやがれッ!!!」 明確な返事が得られず再度繰り返したクンツァイトに、ヒスイは勢い良く顔を上げて叫んだ。 拘束を解き丁寧に降ろそうとする機械人から飛び降りたヒスイは怒鳴り散らす。 「テメェ!マジで何考えてやがんだ!?ざけんじゃねぇっ!!」 「?何をそんなに怒っているのだ。」 「何を・・・って、テメェ…!!」 「データが古いと言ったのはオマエだろう。更新するのは悪いことではないと思うのだが。」 悪びれずに言うクンツァイト。逆に一人だけ頭に血が上っている自分が馬鹿らしくなってきたヒスイは、毒々しく吐き捨てた。 「やり方がおかしいんだっつーの、やり方が…!」 力が抜けて肩を落とすヒスイ。 近くではシングだけがオロオロし、他の仲間達は面白い見世物に満足したのかそれぞれ道具袋をチェックしたりしている。 「この歳になって抱き上げられるなんて思いもしなかったぜ…ったくよ・・・。」 とりあえず皆から妙な目線で見られるような事態は回避できたと溜息を吐くヒスイに、クンツァイトが再度火をつけるような発言を投下する。 「抱き上げてほしいのか?いつでも可能だぞ。」 「違ェよ!!!テメ、俺の話聞いてたか!!?」 次やったら容赦しねぇからな、あとコハクにも絶対手ェ出すなよ、と騒ぐヒスイの機嫌はその日、半日以上悪いままだったとか。 〜オマケ〜 シング「・・・データは取れたの?」 クンツァイト「肯定。可能な限りのデータは取れたぞ。」 シング「ど、どんなデータ?」 クンツァイト「身長、体重、体脂肪、BMI、手足のサイズから3サイズ、色々だ。」 シング「そんなに沢山…。あぁでもヒスイって意外と腰細いよねぇ。いくつくらいあるの?」 クンツァイト「・・・。・・・返答を拒否する。」 シング「えぇ?何で?」 クンツァイト「・・・・・。」 ヒスイ「テメェら!口動かしてねぇで足動かせ!遅れてんぞ!!」 他の人と同じ扱いみたいだけど、実際はかなりヒスイ贔屓なクンツァイトが好みです。 主とはまた別で、みたいな。 おかしい自分クンヒス好きすぎる。 でも正直アニメOPの兄さんは攻撃の際反動がデカイと思うんだ…。 あのふらふらっとしてる兄さんに 萌 え る ! ! 2009.01.03 水方 葎 |