「あら・・・?」

ロビンは新聞の記事に、少し驚いた声を出した。
いつものようにパラソルの下、お茶をしながらの情報収集である。
「ん?どしたの、ロビン。」
ゴシップ記事が多い雑誌を読んでいたナミは顔を上げてロビンの方を見る。少し不思議そうな顔で記事を凝視していたロビンだったが、やがて流れる黒髪を押さえながらナミに向き直る。
「海賊が、居なくなったんですって。」
「・・・何よそれ。」
襲撃されたか、グランドラインに呑まれたか。
そんな船ならいくらでもあるわよ、と言いかけたナミだったが、その新聞を差し出されて思わず受け取った。
「有名な海賊よ。懸賞金もルフィと同じくらい。」
「そうなの?」
ロビンが指差した記事には、大きく『忽然と姿を消した海賊』と見出しがついている。
小さな文字を読み進めると、どうやら船には争った後も無く、クルーだけが居なくなっていたらしき事が書かれていた。積んであったであろう宝は殆ど消えていたので他の船に襲撃された説が濃厚だが、それにしては血の跡が無い上に、クルーもそして船長も消えている。海軍本部に首が届けられた記録も無いという。
何より、海賊旗の髑髏がそのままに掲げられているのだ。
「髑髏がそのままじゃあ、襲撃されたとは言い辛いわね。」
「ええ。・・・人が姿を消したなんて・・・このグランドラインじゃ、やっぱり何があっても不思議じゃないのね。」
「不思議、で人が消えるの〜?もー嫌よ、これ以上のゴタゴタは!」
「ふふ。それはグランドラインの気分次第じゃない?」
読み終わったナミが結論を出し、ロビンへと新聞を返して雑誌を再び開く。
サンジが入れた冷たいオレンジジュースを一口飲み、さて続きをと頁を捲ったところで、とある記事が目についた。
「ロビン。これ、その海賊団の記事じゃない?」
「え?」
ほら、と片側を丸めて差し出すナミ。
そこには、頁の3分の1を使って『消えた海賊団の真実は・・・!?』と、いかにもそれらしく書いてある。



『海軍の調査によれば、船には
"血痕一つついていなかった"という、この事件。船長室手前の部屋には航海日誌と思われる本があったと発表されている。しかし海軍研究部によると巧妙な手段を用いてあり、開くと同時に爆発して灰になってしまったようで、解決の糸口は見えない。同じく隣の部屋にはクルーのものと思われる個人の日記が棚に納まっていたが、最終の日付と、船の日常が記してあるに留まっていた。最後に少し震えた文字で"嵐がきた"と書かれているのが気になるものの、きっと真実が闇の中から出る事は無いだろう、との見方が強まっている。』



「ウチのバカ共にも気をつけて貰わなくっちゃ。特にお宝が消えないように!」
「ええ、そうね。」
















この出来事は、一時世界中を賑わせた。



けれど誰の口からも、



そう、元ハートの海賊団クルーからも。



副船長の約束を守り、真実が語られる事は無かったという。




















『本当・・・しょうがねぇ奴ら。』


少し含みを持った声が、ハートの海賊団の船内に響いた。



















最期の唄  END