「うわああああああっ!!!」 弾かれたように立ち上がったおれは、足をもつれさせながら走り出した。 なんで、 なんで、 なんで!!! 頭が上手く働かない、 心臓がどくどくと脈打っている、 体中の血液が沸騰しているみたいに、全身が熱い!!! 「たす、助けて・・!!!」 もう何に助けを求めてるのか、何処へ逃げたらいいのか、そもそも何から逃げているのか分からない。ただ、この世界にはおれの居場所なんて何処にも無くなった。それだけが脳を支配する。 「うわあああああ!!!」 狂ったように叫びながら、おれはがむしゃらに通路を走りぬける。 皆で笑い合いながら入った食堂への通路。 風呂上がりにウロウロする船長を引き摺った通路。 敵船の奴と殺り合った通路。 全部を擦り抜けながら、おれは走った。 「助けて・・・助けて!!!」 流れてゆく過去の景色の中には、慣れ親しんだクルーが、おれが居るのに。 「ああああああっ!!」 バンッ 何もかも分からず、ただ目の前の扉を勢い良く開けると、そこは船尾だった。 吹き抜ける冷たい風が、おれの頬を叩く。 「たす、け・・・・。」 もう何処にも逃げ場なんて無くて。 居場所なんて無くて。 光さえもなく、目の前は真っ暗だった。 愕然と膝を付いたおれは、床へ両手をついて沈む。汗だか涙だか分からないものがいくつも木板へ染みを作った。 「誰か、だれか、だれか・・・。」 ただ、どうしていいのか分からない。 おれは ひとりぼっち だから。 ガランッ カラッ、カラ・・・。 数歩先で、少し大きめの乾いた音が響いた。 「・・・・・・・?」 まるで何かが床へ落ちたかのようなその音へ、おれはゆっくりと顔を上げる。 『しょうがねぇ奴だな。』 船長が、いつものように笑ってた。 その手には、見慣れた抜き身の愛刀。 → |