おれは、街に残る事にした。 ペンさんのように、船長と共に逝く事もせず。 ベポのように、目的がある訳じゃないけど。 目の前からいきなり光が無くなって、おれの世界は真っ暗になったんだ。 だから、何をしていいのか分からない。 息の仕方も忘れてしまったみたいで、胸が苦しい。 ペンさんもベポも見送った後、他のクルーとも別れる。 きっともう、会うことはないだろう。 あれだけ共に過ごし、笑い、喧嘩した仲間だけれど。 きっともう、会うことはないんだ。 お金は有り過ぎる程貰っていた。 けど、おれは宿も取らず島の裏側へ来ている。 ふらふらと歩き、途中擦れ違う人には「そっちは危ない」とか「日が落ちる前に戻った方がいい」とか言われたけれど、言葉として認識しても脳は理解をしてはいなかった。 もう、全てがどうでも良くなっていたんだ。 そろそろ辺りは暗くなっている。 確か昨日は、このくらいの時間から嵐が襲ってきたんだっけ。 「船長・・・、船長、せんちょう・・・・。」 真っ暗だ。 足元も見えない。 おれはただ、光を求めて呟き歩く。 「船長・・・・。」 見ているしか、無かった。 代わりにも、なれなかった。 『死ぬときは船長を守って死にたい。』 クルーになった時、おれは日記に、そう書いた。 けれどもう、叶わない。 馬鹿みたいに、見てる事しか出来なかった自分。 「・・・船長・・・・・。」 足だけが、光を求めて進んで行く。 真っ暗だ。 目を閉じているのか開けているのかすら、分からない。 不意に、 足場が無くなった。 重力に引き寄せられるおれが最期に見たものは、 遥か下に見える海面と。 その上で、おれを振り仰ぐ、 船長の姿。 ああ、やっぱりおれは、この人が居ないと駄目なんだ。 おれには、この人が全てだから。 世界が、真っ白に輝く。 『遅ぇよ、キャスケット。』 声が、聞こえたような気がした。 求めた光 END |