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* お気に入り * ぴちゃ、ぴちゃ、と水音が船長であるローの部屋に響く。 時刻は丑三つ時近く、窓から見える海は闇と同化し、ただ静かに揺れている。 「・・・は・・、」 ベッドに腰かけたペンギンから、小さく吐息が漏れた。 ペンギンの足の間に蹲っていたローは、ペンギンの中心を丁寧に舐め上げて笑む。 「キモチイイ?」 「・・・。」 それでも常と同じく、ペンギンは喋ろうとしない。 ただ、ローの頭に置かれた大きめの手が悦であることを雄弁に語っていた。 慈しむように撫でられ、気を良くしたローは再び行為に没頭し始める。 「んぅ、・・・・ん、ん、」 息は鼻から抜けるように、十分な唾液を有する口全体でペンギンのそれを含む。形を確かめるように上下させると、ローの唇にペンギン自身が力強く脈打つ感覚が生々しく伝わってきた。生きている、雄の臭いにローは堪らない心地になる。 じゅる、とわざと音を立てて口の中のペンギンを追い上げ、舌を使って先端の窪みを割るようになぞる。 其処は確かに先走りの液の味がして、小さく飲下したローはこのまま精液も吸い上げてやろうかと思う。 嗚呼、けれどそれでは面白くない。 再び口を離し、濡れた舌を裏側からつぅ、となぞる。 それだけの刺激でも今のペンギンには大きいものとなっているのだろう。肩を震わせ、悪戯するローを嗜めるような目で見る。小さく眉を寄せる表情は熱を含んでおり、普段見せることのない顔にローの熱も上昇してゆく。 商売女の言う「男性器が美味しい」というリップサービスの話は聞くものの、実際そう思っている者は少ないだろうとローは思う。上品な味とはとても言い難く、寧ろ苦くてしょっぱいのだ。余程狂っている女に違いない。愛にも、欲にも。 そして今現在の己の姿を客観的に考えると、やはり狂っているんだろうなと唇の端を上げた。 ペンギンのそれが美味しくて仕方無いのだから。 嗚呼、もっと、もっと欲しい。これが、もっと。 「なぁ、ペンギン・・・。」 「・・、なん、だ・・?」 「これ・・・噛み千切って、イイ?」 ゾクリと背筋が粟立つ程に狂気を帯びた瞳に見つめられたペンギンは瞬間、息が詰まる。 絶頂を迎えそうなところで時が止められた感覚が、肌に纏わりついて離れない。 静まり返った部屋にペンギンの息が漏れる。 「ふ・・・、構わないぞ、船長。」 それは笑っているようにも、呆れているようにもとれた。 「ハハ、これから男として機能出来ねぇぞ?」 ローは犬歯でペンギンの先端を引っ掻く。 全く動じないペンギンは余裕の表情でローを見下ろす。 「男として機能出来なくても傍には居られるだろう。」 ベッドの空いたところに後ろ手をつき、髪をかき上げるペンギン。 頬から一滴、余韻の汗が落ちた。 「夜はどうすんだよ。」 今度は労わるように剥き出しのそこを舐め、ローは上目遣いで流れ落ちた汗の先を見た。 それはペンギンの胸板を伝い、静かに腹をなぞってゆく。 「悦ばせる方法なんていくらでもあるさ。」 「・・・ふぅん。」 ならば己が貰っても問題無いな、と頭のどこかで答えを出したローは再度陰茎を口の中へ導く。空いている手で快楽を引きずり出すように袋を揉み、口はゆっくりと性器を含んでゆく。根元に近付くにつれてその容量に苦しくなっているのか、ペンギンの耳に、ぐ、と空気を呑む声が聞こえる。 けれど口と手の両方で追い詰められているペンギンに余裕は残っておらず、よって無理をするなという言葉すらかけられない。第一、きっと千切る為に喉元まで銜え込んでいるのだろうから。 やると言ったらやるのだろう。不思議とペンギンの中に嫌悪や恐怖は一切無く、むしろそれほどまでに己のそれを欲する船長を愛しく思い、好きにさせてやりたい感情のほうが遥かに高い。 結局、狂っているのだ。 どちらも、愛と欲に。 不意に、歯が宛てられる。柔らかなところからいきなり硬いものが出てきたようなその感覚に快楽を感じ取るのは当然だろう。ペンギンは噛み千切られる瞬間に己が情けなく果てやしないか少し心配になった。 ローは構わず歯に力を入れてゆく。 少しずつ、少しずつ。 たまに圧迫された舌が、慈しむように動く。 少しずつ、少しずつ。 「ん・・・。」 いっそひと思いに噛み千切れば楽なのだが、どうやらそうする気はなさそうだ。 ゆるりゆるりと進められてゆく歯にそれでもペンギンは小さく微笑んだ。 「・・・ぁが。」 「・・・?どうした。」 だがその行為はロー自身によって中止される事となった。 急に外気にあてられ少しばかり熱を開放されたペンギンは静かに問う。 それはまるで迷子になった子供に優しく訊ねるような声音で。 「・・・。」 口から離したペンギンのそれを片手で持ち、まじまじと見つめてはたまに舌で舐めるローは無言だ。 ペンギンはただ黙ってその行為と時間を受け入れる。 「駄目だ、ペンギン。」 「何がだ。」 「だっておれ、コレじゃねぇと満足できねぇ。」 そうして恍惚の表情でペンギンの中心を頬擦りするロー。 見上げるその瞳は濡れていて、言の葉と共にペンギンの劣情を誘う。 「形も、」 「大きさも、」 「これ以外に満足出来ねぇから。」 だから、駄目。 少しだけ掠れた声でローが小さく呟けば、ペンギンはとうとう我慢がきかなくなり、両肩を掴み上げて銀糸の痕が残る唇へ噛み付くように接吻をする。んぅ、と唸るような声が聞こえたがお構いなしに口内を貪った。歯列をなぞり舌を絡め取るその勢いは普段のペンギンにみられるものではなく、ロー自身の快楽も呼び起こされる。 「・・・っは…、ナニ?火ィ付いた?」 「元から消えてなどいないが。」 「フフ、」 笑うローはそのままペンギンの陰茎を口に含む。 今度は千切る為じゃなく、行為を続けるためらしい。 中途半端にされていたペンギンの熱は容易く持ち上がり、先程までとは違い吐精目的をもった口の動きに、すぐ追い上げられてゆく。 「・・・、船長、もう、離してくれ・・・、」 絶頂近く途切れ途切れに言うペンギンだが、どうやらローは聞き入れないようだ。 一度達しそうなところを止められ、再度熱を篭らせるとその快楽は増しやすい。早急に吐精を促すローの舌技にペンギンは彼の顔を引き剥がす暇も無かった。 「―っ、」 ドロリ、と口の中へ精液が放たれる。 途端舌の上に苦味を感じたローは飲み込もうと喉を動かそうとするが、粘着質をもつそれは中々喉を通らない。ペンギンから口を離し、何とか飲み込もうとするが上手くいかないらしい。 「ん、ん、」 「・・・・無理をしないでくれ、船長。」 飲み込むのが始めてではないが、その行為自体を好いていないローの事だ。今回急に飲み込もうとする意図は先の台詞から何となく把握出来るものの、ペンギンは無理に飲み込ませたいなどとこれっぽっちも思っていない。 少しの間それと格闘していたローだったが、降参するかのようにカパリと口を開けた。 「・・・まじぃ。」 近くにあったティッシュ箱へ手を伸ばし、ゲホゲホと咽せながら毟り取るように枚数を重ねた其処へ垂らす。 だから無理をしないでくれと言ったのだが、と思いながらペンギンはベッドを降りてローの目の前へ膝を付いた。 生理的な涙を浮かべたローは酷く扇情的で再びペンギンの熱を上げそうになったが、それよりまずは目の前の事だと小さく溜息をつく。 「・・ほら・・・もう少し口を開けてくれ。」 「んぁ。」 にちゃ、と精液がローの口から垂れる。自分で出したものだと思うと恥ずかしい気がしないでもなかったが、ペンギンにとってそんな事はあまり重要ではなかった。顎に手を沿え、もう一方の手で口の中の残骸を掻き出していく。自身が放った精液はローの唾液と混ざって、ペンギンの指へ絡みつく。 幾度かティッシュへ掻き出すと、ある程度口内は綺麗になった。 「飲めると思ったんだけどよ、意外に喉通んなくて、ケホ…。」 残ったものは唾液と共に飲み下したのか、コクリと喉が上下するのを見届けてからペンギンはゆるりとローを抱き締めた。ペンギンが力を入れるとコトリ、コトリ、と素肌を通じてローの鼓動が伝わってくる。それはローも同じで、珍しく大人しくしながらペンギンの鼓動を感じていた。 「あー・・・キモチイイ…。」 「・・・・。」 ペンギンの肩に顎を乗せ、うっとりと呟くロー。ペンギンは何も言わなかったが、それでも同じ気持ちを有しているのは確かだろう。ペンギンは勿論ローも未体内に熱を飼っているが、それでも少しだけ鼓動を合わせていたかった。 「・・・続き、スル?」 顔をずらし、ペンギンの目を正面から捉える。 お前の雄も。 体内に孕む熱も。 それに伴う快楽も。 まだどれも貰っていないという目で。 ペンギンを誘う。 「ああ。」 どうやら、本当に喰いちぎられないかと心配する必要があるのは今のようだった。 「船長の、望みのままに。」 そうしてペンギンは、そっとローを寝台へ運ぶ。 愛する人の、お気に入りを与えるために。 ―嗚呼、愛に、欲に、狂っている。 fin. ******** ウチのサイトのペンギンは決して船長に命令しません。必ず「〜してくれ」と言います。 それはさておき初のペンロエロネタがフェラってどうなの・・! しかもペンギンだけで船長イってない(笑) 「喰いちぎってイイ?」と「形も、大きさも、これ以外に満足出来ない」って台詞を言わせたかった!以上! 090517 水方 葎 |